イベント演出の稟議は、どこで止まるか。決裁者が見ている5つの数字(稟議の通し方)
企画の良し悪しで止まることは、ほとんどありません。止まるのは、決裁者に届く情報の形です。
決裁者は会場に来ません。当日の空気も、光の美しさも知りません。手元の1枚だけで判断します。
この記事では、稟議が止まる3つの分岐と、決裁者が確認している5つの数字、そしてそのまま使える稟議書1枚の型をまとめました。
イベント 稟議 通し方

・稟議が止まる原因は、提案の完成度ではなく「担当者が社内で説明できる形になっているか」です。
決裁者は提案者ではなく、担当者の説明を聞いています。
・決裁者が見ているのは目的・予算・効果の3点。この3点を5つの数字に落とすと、質問が来なくなります。
・予算は期の始まる前に決まっています。概算レンジを先に出すだけで、担当者は社内で動き出せます。
1. 稟議が止まる場所は、3か所しかありません
イベントの稟議は、次の3つの分岐のどれかで止まります。演出の善し悪しは、この3か所のどこにも関係ありません。
[表]
|止まる場所 |起きていること |決裁者の心の声|
|① 目的の分岐|目的が複数並んでいて、一言で言えない|「で、これは何のための施策なんだ」|
|② 予算の分岐|金額が「一式」で、内訳が読めない。予算枠に載っていない|「いくらかかるのか、どこに消えるのか分からない」|
|③ 出口の分岐|中止の条件と、終わった後に何が残るかが書かれていない|「中止になったらどうするの? 翌年もまた金が出るのか」|
逆に言えば、この3か所を先に埋めた資料は、内容の細部を問われずに通りやすいということです。決裁の場で議論されるのは、演出の色でも音楽でもなく、目的・金額・リスクです。
提案資料を作る立場の記事でも、止まる理由は提案の完成度とは別のところにあると指摘されています。評価を決めるのはその場にいない決裁者であり、その決裁者に説明するのは提案者ではなく、社内の担当者だからです。担当者が役員会の10分で自分の言葉で話せなければ、どんなに良い提案でも手元で止まります。
出典:E.I.T.M「担当者が前向きでも稟議が通らない、たった一つの理由」(https://eitm-co.com/column/teiansho-ringi/)

2. 決裁者が見ている5つの数字
決裁者が判断に必要としているのは、目的・予算・効果の3点です。これを光の演出の企画に当てはめると、下記の5つの数字になります。この5つが1枚に揃っていれば、質問はほぼ出ません。
1目的の数——「1」に絞る
目的は1つにしてください。「集客と、地域貢献と、社員の士気向上と、SNS拡散のため」と並べた瞬間に承認は遠のきます。決裁者は「結局どれが主目的か」を測れないからです。
主目的を1つに決めれば、会場・規模・演出・KPIが自動的に決まります。逆に、目的が複数ある資料は、どれも達成しない企画になります。
2総額の内訳項目数——「一式」を禁止する
見積もりを「演出費 一式 50万円」で出すと、決裁者は金額を判断できません。止まっている案件の多くは、内容ではなく予算の枠に入っていないことが原因です。そして予算は期の始まる前に組まれるため、金額の情報がゼロの状態では担当者は社内で動けません。
提案資料づくりの実務では、提案が固まる前でも概算レンジを先に出すことが推奨されています。ただし上限を低く言わないことが条件です。安く見せると、正式見積もりの時点で担当者が社内で梯子を外されます。
出典:E.I.T.M(https://eitm-co.com/column/teiansho-ringi/)
[表]
|書き方 |決裁者の反応|
|「演出一式 50万円」|何にいくらか分からない → 判断できない|
|「ランタン本体/ヘリウム/設営・運営/撮影/保険」|比較も検討もできる → 予算枠の相談に進める|
|「概算レンジは◯◯〜◯◯万円」|予算枠に載せる検討が始められる → 期をまたがずに済む|
3中止の判断条件——数字で先に決めておく
屋外イベントで最も突っ込まれるのが、ここです。
「雨なら中止なのか、決行なのか。中止の場合、費用はどうなるのか」。
中止判断の基準と費用の扱いを先に書いてある資料は、決裁の場で止まりません。
たとえば「風速◯m以上で中止/中止時は代替日程で実施/装飾費のみの負担」というように、条件と数字で書きます。
判断を当日の現場に持ち越すと、担当者だけが責任を負う形になります。
4前例の数——「うちに近い事例」があるか
決裁者は会場を知りません。「同じ規模・同じ条件下で、実際に成立した」という前例が最も効きます。ここは自社の実績数を出す場面です。株式会社SLJの場合、累計開催会場100ヶ所以上、累計参加者10万名以上、打ち上げ基数25,300基以上、イベント後の回収率100%という実績があります。
加えて、自治体・教育機関の案件では、公的な枠組みへの参画が判断材料になります(こども家庭庁「こどもまんなか応援サポーター」、東京都「こどもスマイルムーブメント」、内閣府「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」)。
前例は「数」と「条件」をセットで出してください。「実績多数」では何も伝わりません。「学校の体育館で300名規模」など、決裁者が自社と重ねられる条件を添えると効きます。
5終わった後に残る回数——翌年も使えるか
最後に問われるのが、「これは毎年費用が発生するのか」です。ここが唯一、他社との差が数字で出る場所でもあります。
使い捨て前提の備品は、毎年同じ費用がかかります。一方、回収して再利用できる備品なら、2回目以降は消耗品と運営が中心になります。さらに製品が2週間以上浮く仕様であれば、1回の調達で本番・翌日の展示・翌週の別会場と3回使う設計もできます。
決裁者にとって、これは「経費」ではなく「予算の使い方」の話です。回数の想定が示されていれば、「高い/安い」ではなく「何年でどう回収するか」で議論が進みます。

3. そのまま使える:稟議書1枚の型
上記5つの数字を、決裁者が見る1枚に落とすと下記の構成になります。A4で1枚、箇条書きと数字だけで十分です。この1枚を担当者の手元に置いておくと、役員会で質問が出たときに答えるものが揃います。
[表]
|欄|書く内容|数字の作り方|
|1 目的|この企画の主目的を1文で|目的は1つだけ書く|
|2 背景|なぜ今やるのか(1〜2文)|直近の課題を1つ添える|
|3 概要|時期・会場・規模・対象人数|実施回数(今年/来年)も明記|
|4 予算|費目別の内訳と総額|「一式」を使わない/概算レンジを添える|
|5 効果|何がどう変わるか|測れる数に置き換える(来場・滞在・投稿・リピート)|
|6 中止条件|天候・人数未達時の扱い|基準と費用負担を数字で|
|7 前例|同条件の実施事例|規模と会場種別を添えて引用|
|8 実施体制|発注範囲と当日の担当|自社側の工数を明記|
4. 効果は「当日」ではなく「戻ってから」で書く
イベントの稟議が通りにくい理由は、費用対効果が見えにくいことにあります。広告のようにクリック数が即日出ないため、成果が数字になるまで時間差が生じます。また、装飾費・運営費・広報費など複数の費用が積み上がるため、総額を把握しないまま申請すると、後から追加費用が発生して信頼を損ないます。
出典:オージャスト「展示会出展の社内稟議・予算承認の通し方」(https://www.orgiast.jp/topics/7757)
対策は、効果を「当日」だけで書かないことです。当日の来場者数より、その後の動きのほうが決裁者には刺さります。
[表]
|書くタイミング|KPIの例|
|当日|来場者数・参加者数・滞在時間・SNS投稿数|
|終了後7日|施設の来館数・宿泊予約数・問い合わせ件数|
|終了後30日|商談化数・リピート数・掲載記事数|
|翌年度|再実施の回数・転用した会場数・調達コストの変化|
企画書の実務でも、開催後30日以内の商談化数までKPIに入れることが差がつくポイントとされます。当日の入場者数だけでは、決裁の根拠として弱いからです。
出典:シャノン「イベント企画書の書き方3ステップ」(https://www.shanon.co.jp/blog/entry/event_proposal/)
止まりやすい書き方(よくある例)
「幻想的な演出で来場者に感動体験を提供し、SNSで話題化を狙います」——この一文だけでは、決裁者は判断できません。数字がない、中止の条件がない、終わった後に何が残るかがない。この3つが欠けたまま出ると、担当者が社内で答えられない質問にぶつかります。

5. 稟議の前に確認しておきたい実務チェック
・その金額は、今期の予算枠に入っていますか?入っていない場合は、期をまたぐ前提でスケジュールを組み直します。
・中止時の費用負担の線引きは、発注前に決まっていますか?契約前に確認すべきは、含まれる範囲・別料金の項目・キャンセル条件の3点です。
・当日、自社側の担当は誰で、工数は何時間ですか?設営・進行・回収まで発注範囲に含めるかで、社内の工数が変わります。
・借りるのか、買うのか。毎年実施するなら購入、単発ならレンタルが有利になる分岐があります。想定回数を伝えると、比較した提案を受け取れます。
・資料を渡す相手は誰ですか?自分で読む資料と、上司に渡す1枚は別物です。担当者がそのまま説明できる1枚を先に作ります。
6. よくあるご質問
Q. 資料は何枚必要ですか?
A. 3層に分けるのが実務的です。詳細版(実務の読み合わせ用)、報告版(提案の場で使う分量)、上申版(決裁者に見せる1枚)。多くの会社が上申版を担当者に丸投げして止まります。ここまで一緒に作れるのが、当社の進め方です。
Q. 概算の金額感だけ先に聞けますか?
A. 伺えます。会場・人数・演出の範囲が決まっていなくても、上限と下限のレンジでご提示します。予算枠に載せるための一次情報としてお使いください。
Q. 中止になった場合、費用はどうなりますか?
A. 前提として、天候による中止・延期の条件(判断基準、返金・リスケジュールの扱い)は契約前に書面で取り決めます。屋外開催では特に、この条件が予算判断に直結します。
Q. 他社と比較しています。何を揃えれば比べられますか?
A. 総額ではなく、①含まれる範囲 ②人数と単価 ③追加料金の条件 ④中止時の扱い ⑤終了後の回収・再利用の可否、の5項目で揃えてください。この5項目で並べると、実質的な総額の差がはっきりします。
Q. 決裁者に見せる資料の作り方も相談できますか?
A. ご相談いただけます。実施条件が固まる前の段階でも、決裁を通すための1枚のたたき台からご一緒します。
まとめ
稟議が止まるのは、企画が面白くないからではありません。決裁者に届く情報の形が整っていないからです。目的を1つに絞り、金額を内訳で示し、中止の条件と終わった後に残るものを書く。この5つの数字が1枚に揃えば、当日の演出の細部は、あなたが思っているより問われません。
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稟議に使える1枚から、ご一緒します。
会場・人数・予算枠が決まっていない段階でも構いません。概算レンジと、決裁用の1枚のたたき台をご用意します。
※稟議の進め方は企業・自治体ごとに異なります。本記事は一般的な実務の整理であり、社内規程の確認は各組織でお願いします。
※費用・実施条件・中止時の扱いは、会場・規模・時期により異なります。個別のお見積りと契約条件のご提示をもって確定します。
※実績数値は株式会社SLJの実績です(累計開催会場100ヶ所以上/累計参加者10万名以上/打ち上げ基数25,300基以上/回収率100%)。
※記事内の写真は株式会社SLJの実施写真です。
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